EUタクソノミー・コンパスで見るサーキュラー・エコノミーに関する基準。
2020年7月にEUでタクソノミー規則が発行され、2022年3月にはEUグリーンディールパッケージが示されました。「持続可能な製品のためのエコデザイン規則」では、「デジタル製品パスポート(DPP)」の義務付けが示されています。
EUでは関連付けた規制が考えられます。EUタクソノミーで規定されつつある技術的スクリーニング基準についても、注視していく必要があります。
タクソノミー規則では、次の6つの環境目標が示され、その技術的スクリーニング基準の策定を欧州議会が欧州委員会に対して要請されています。
①気候変動緩和
②気候変動適応
③水と海洋資源の持続可能な利用と保護
④サーキュラー・エコノミーへの移行
⑤汚染の予防と管理
⑥生物多様性と生態系の保護と回復
現在は2022年3月の委任規則(委任法)の改訂[i]等により「気候変動緩和(付属書Ⅰ)」と「気候変動適応」に関して基準と、他の環境目標に対しても重大な害を及ぼさないかを判断するための技術的スクリーニング基準が示されています。
EUタクソノミー・コンパスは、EUタクソノミーの内容を視覚的に表現したものとしてweb上に公開[ⅱ]されています。事業者等の活動がEUタクソノミーに含まれているか、どの環境目標に実質的に貢献しているか、どのような基準を満たす必要があるかを確認することができます。
EUタクソノミー・コンパスでは、環境目標毎の経済活動を一覧で見る方法と、特定セクターの経済活動から、EUタクソノミーに該当するのか、適用される技術スクリーニングはどのようなものかを確認する方法があります。後者の特定セクターでは図のように示されます。
図. タクソノミーコンパスでの特定セクターでの技術的スクリーニング基準の表し方
例えば「製造業」セクターの「蓄電池製造」では、上記の「気候変動緩和への貢献」⇒「重大な危害を加えない基準」⇒「サーキュラー・エコノミー」に下記のように基準が記載されています。
新しいバッテリー、コンポーネント、および材料の製造のために、活動は以下の技術の入手可能性を評価し、可能な場合はそれを採用する。
a.製造された製品における二次原材料および再利用部品の再利用および使用。 b.製造された製品の高い耐久性、リサイクル性、簡単な分解と適応性のための設計。 c.製造された製品のライフサイクル全体にわたる懸念物質に関する情報とトレーサビリティ。 リサイクル プロセスは、欧州議会および理事会の指令 2006/66/EC の第 12 条 (91) および同指令の附属書 III、パート B に定められた条件を満たし、最新の関連する最善の利用可能な技術の使用を含む、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、およびその他の化学物質に指定された効率の達成。これらのプロセスにより、過剰なコストを回避しながら、技術的に実現可能な最高度まで金属含有物のリサイクルを保証する。該当する場合、リサイクル プロセスを実行する施設は、欧州議会および理事会の指令 2010/75/EU に定められた要件を満たす。 |
後半は、既存の法令で規定されたものなので、特に問題はないと思いますが、前半の「以下の技術の入手可能性を評価し、可能な場合はそれを採用する」に関しては、EUエコデザイン規則と関連する項目もあり、技術等の進展により対応すべきレベルも異なってくることが予想されます。蓄電池の購入者(例えば自動車産業)からは、対応を求められることも考えられるでしょう。
基準の策定は延期されている部分もあり、委任法の今後の改訂については注視していくことが望まれます。
以上