日本の森林で最も大切なのは、すべての森林が適切に保全されること。
現状はどうでしょうか?
森林に求められる機能は、令和元年の内閣府の調査で上位は、災害防止、温暖化防止、水源の涵養、大気浄化・騒音緩和、木材生産となっています。いずれに対しても十分に機能を満たしていないのはご存じのとおりです。
これらの機能が十分に発揮されるためには、多くの森林、できれば、すべての森林が保全されることが望まれます。
図1. 森林蓄積量の推移
(出典: 森林・林業統計要覧等より作成)
日本の森林面積は、約2500万haで大きく変化していませんが、戦前に造林された木の成長等により、蓄積量は図1に示すように増加しています。
しかし、森林保全に不可欠な間伐は適正に行われているでしょうか。間伐面積は図2に示したように、減少傾向であり、適正に森林保全が行われているとは言えません。
図2. 間伐面積の推移
(出典: 林野庁webサイト 間伐の実施面積等の推移:林野庁 (maff.go.jp)より作成)
適正な森林整備は今後期待できるのでしょうか?
図3に示したようにOECD加盟国の中で、森林資源量に対する年間の伐採量は、日本が最も少ないです。急峻な地形であることなどの要因はありますが、他国に比べて、日本の森林活用は森林資源量のわりに遅れているでしょう。
残念ながら日本には天然林[i]は、ほとんど存在しません。人手をかけなければ維持することが困難です。すべての森林を整備するための需要があることと、森林自体が経済的に自立できるようにならないと、適切に整備されることは期待できません。
図.3 OECD加盟国の森林資源に対する年間伐採量
(出典: 森林・林業学習館日本の森林面積と森林蓄積の推移 (shinrin-ringyou.com)
図4. 木材供給量及び木材需給率の推移
(出典: 木材需給表推移等230929-1.pdf (maff.go.jp))
図4に示すように、国産材の供給量は近年持ち直しているものの、需給率は40%前後です。国内総需要は約8千2百万㎥で、前年からの増加量は約3百万㎥とほほ燃料材の増加分です。
建築物で木材需要の多い新築一戸建ての着工件数は1970年代は100万戸前後でしたが、近年は50万戸を割っています。人口減等で、今後の増加は期待できないだろう。また、木造率は増加し、2022年で91%になっている。以上の点から建材需要の大幅な伸びは期待できません。
燃料材以外に、大幅な需要拡大は期待できないでしょう。
総需要とは別に、国産材の需要量を増やすためには、輸入材を減らすことが考えられます。2022年で輸入材が多いのは木材チップ(燃料用チップは含まない)で、輸入材の39.5%を占めています。また、燃料材は14.1%で、対前年比は32.1%増となっています。
燃料用チップを除く木材チップは大半が輸入となっています。
木質バイオマス発電の急速な進展により、燃料材の需要が急激に増加し、建材等の利用向けを始めとした既存需要者との競合や、森林資源の持続的利用等への懸念が生じているとされています。しかし、前述のような状況からは用途の競合として考えるのではなく、需要の拡大につながる好材料として、適切な森林整備を前提とした生産量の拡大を進めることが望ましいでしょう。
また、前述の森林に期待される機能は、森林の所有者ではなく、広く社会に便益を与えるものです。森林環境税等により国や自治体の負担で森林保全が実施されるものの、多くを森林所有者だけが費用負担するのは、不合理な部分があります。令和4(2022)年8月に森林管理プロジェクトに係る制度の見直しが行われ、森林整備が地球温暖化対策のための排出削減・吸収量認証制度(J-クレジット制度)に利用できる可能性が増加しています。しかし、災害防止、温暖化防止、水源の涵養に関する貢献については、森林所有者に対する補助金等の見直しなどにより、還元することも必要だと思われます。これにより、担い手不足と機械化の遅れが改善されれば、森林整備が拡大していくことが期待できます。
[i] 「天然林」とは、自然の力で育ち(発達し)、人手が入ってないか、長い間人手の入った痕跡のない森林(天然林と原生林の違い、天然生林とは (shinrin-ringyou.com))