COP28で進展したいくつかの合意からも、再エネ利用の拡大の必要性はさらに高まります。
再エネ電力の供給量はまだ十分ではありませんが、再エネ電力の価格も安定し、再エネ電力調達手段も増加しています。
再エネ電力をどのように調達するか考える時期が来ています。
国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では大きな進展は報道されていませんが、採択された決定文書[i]に、次のことなどが盛り込まれました。
♦地球の温度上昇を5℃に抑えるための炭素排出余地は急速に減少している。
♦世界の温室効果ガス排出量を2019年度比で2030年までに43%、2035年までに60%削減が必要。
♦2030年までに世界の再生可能エネルギー容量を3倍にする。
♦排出対策のない石炭火力発電の段階的廃止に向けた取り組みを加速する。
日本政府も企業も、これまで以上に再エネ電力の拡大を望まれるでしょう。一方で日本は再エネ電力の量が増やせない、再エネ電力の価格は高いなどの否定的な声も聞かれます。事実を確認したいと思います。
2022年に電力小売事業者(以下、小売事業者)の倒産や事業撤退が多発しました。その多くは、自主電源を持たない又は主がFIT制度(固定価格買取制度)による電力のため、電力卸取引市場の価格変動・高騰の影響を受けたためです。これは再エネ電力に限ったことではなく、自主電源を持たない小売り電力全般に同様のことでした。
その後、小売事業者の多くは電源調達調整費等を設け、価格変動を顧客に転嫁できるようにするなどして事業再開しています。また、図1に示したように、今年度の電力卸取引市場は安定し、昨年度に比べて安価になっています。小売事業者も電源調達調整が行われることが多くなったので、昨年度に比べて電気料金は安くなっているのではないでしょうか。
図1.電力卸取引市場システムプライスの変動(2022年度と2023年度比較)
ドイツやフランスが再エネを増加させていることにより、電力料金が高くなっているとの閣僚等の発言がありますが、図2に示したように、ドイツもフランスも電気料金そのものは日本よりもかなり低額です。
図2.電気料金の国際比較(2020年)
出典:資源エネルギー庁 令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)
欧州等に比べて高かった再エネ電力価格ですが、太陽光発電については図3に示すように価格差は、ほぼなくなり横ばいとなっています。今後、大きく低下することも考えづらいので、購入を待つ要素はなくなっています。
図3.太陽光発電(2,000kW)の各国の買取価格推移
出典:第91回調達価格等算定委員会資料
再エネ電力の価格は火力発電と異なり、原油や円相場の影響は受けにくく、需給バランスを除いて上昇要因はあまり見当たりません。RE100[i]、再エネ100宣言 RE Action[ii]、SBTi[iii]等により、再エネ電力の需要は益々増加します。自らの再エネ発電やPPAの取り組みと共に、再エネ電力小売りからの調達は加速するでしょう。今後、新規契約が難しくなることも考えられるのではないでしょうか。