再エネ電力の利用が望まれる中、新電力の倒産や事業撤退、
原油高による電力価格の高騰により、購入先の選択が難しくなっている。
電力の購入先をどのように選べば良いだろうか。
RE100や再エネ100宣言RE Actionの参加企業が増えている。Appleのようにサプライヤー企業にも再生可能電力への移行を要請する大企業も出てきています。一方で倒産や事業撤退をした電気小売事業者は30社を超えており、その際に新電力との新たな契約ができない事例も出てきています。契約先が倒産したとしても、一般送配電事業者から供給されるので、すぐに停電という心配はありません。
しかし、顧客や社会に再エネ電力の使用を約束していた場合は裏切ることになります。電力の価格も高くなってしまうことが多いでしょう。電力の購入を決める際に注意すべき点について述べます。
電力の購入購入契約時には、契約変更の目的は何でしょうか。次のいずれかでしょうか。
・再エネ電力の利用率を上げたい。
・電力購入価格を減らしたい。
上記のいずれの場合にも重要なことは、契約した条件で継続して電力が供給されることです。
a.経営状況を確認する
継続的に電力が供給されるかにもっとも影響するのは、事業者としての経営状況です。
経営状況を悪化させる要因は、多くは電力の調達コストの高騰ですが、電力小売のためには、調達コスト以外に、30分毎の需給調整が必要で適正に調整できない場合はインバランス料金が発生してしまいます。この調整作業や営業活動等の人件費や多くの経費が発生します。事業計画通りに電力販売が進まない場合は、経営状況は悪くなります。
一般的な企業経営と同様ですが、新電力は経営規模が小さいことが多く、悪化した経営状況を立て直すのは困難なことが考えられます。ホームページ等で経営状況を確認することが望まれます。
調達価格の上昇を販売価格に転嫁できる契約になっていなければ、経営的には厳しくなります。
しかし、一方で販売価格に容易に転嫁できる仕組みならば、購入者にとっての負担は大きくなります。その点は注意する必要があるでしょう。
b.価格を評価するためにも、自社電源の比率を確認する
自社で発電施設を所有し、その比率が高ければ、火力発電施設の場合を除き、燃料高騰の影響は受けにくくなります。
しかし、調達を取引市場に頼っているのであれば、取引市場の価格高騰の影響を受けます。図1に示すように、ロシアのウクライナ侵攻以前に昨年の10月頃から価格は大きく上昇しています。
需給がひっ迫すれば価格が上昇するのは市場原理ですので仕方ないと思います。FIT電力の場合は取引市場価格での調達となりますので影響は大きくなります。
ただし、発電施設を保有していなくても、発電事業者と直接契約などにより安定した価格で調達できる事業者は、当面問題ないでしょう。
図1. 電力スポット市場平均価格の推移(2021年10月1日~2022年8月30日)
(出典:電力・ガス取引監視等委員会制度設計専門会合資料より)
c.CO2排出係数を確認する
再エネ電力を販売している小売電気事業者は、温室効果ガス排出量に応じたメニューが用意されています。新電力から購入する目的が、再エネ電力比率の向上であるならば、購入者の温室効果ガス排出量の算定にも影響しますので、調整後排出係数の小さいメニューを選ぶ必要があります。購入者自らが非化石証書等を確保する場合にも、証書購入の費用負担は小さくなります。
さらに小売電気事業者の再エネに関しての取組を評価するならば、事業者全体としての排出係数が少ない事業者を選ぶのが望ましいでしょう。表1に環境省が令和2年度実績として公表している一般送配電事業者の排出係数を示しましが、0.000433t-CO2/kWhを下回っている小売電気事業者が多いわけではありません。
電気事業者別排出係数:環境省_算定方法・排出係数一覧 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」ウェブサイト (env.go.jp)
自社発電電力比率:データの正しさは不明ですが、「新電力ネット」のサイトで電力販売量、最大発電出力および発電実績を見ることができます。小売電気事業者の一覧|新電力ネット (pps-net.org)
追記
「RE100」では、再エネ電力に関しての基準を2022年10月24日に一部変更されました[i]。今後、連動して「再エネ100宣言RE Action」も基準を改定する可能性がありますので、電力の購入契約やPPAの契約を行う際には、確認が必要かもしれません。
以上
[i] 20221024_RE100 technical criteria+appendices.pdf (there100.org)