貿易収支が赤字では中小企業は苦戦し、賃金上昇も無理。
サーキュラーエコノミーの展開を加速させるべきか。
8月8日に財務省から、令和5年上半期の国際収支(速報)が発信されました。2023年上半期の経常収支全体は、8兆132億円の黒字でした。経常収支の推移を示されたのが下図です。
1次所得収支は継続して大きな黒字であるため、全体は黒字ですが、貿易収支は4期連続赤字で、2022年下半期よりも改善したものの、5兆1,788億円の赤字です。
図1.日本の経常収支の推移
出典: 令和5年上半期中 国際収支状況(速報)の概要 : 財務省 (mof.go.jp)
貿易収支は赤字もしくは若干の黒字で、1次所得の大幅な黒字により、経常収支全体は黒字を保っているという傾向は、長年続いており、今後も続くと思われます。
私の視点で、この傾向が続くことによる課題と、改善につながる施策に関して述べてみようと思います。
1次取得は、海外への直接投資や証券投資などによる、対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を表すものです。2023年上半期の1次所得の大きな利益は、直接投資の10兆1,918億円と証券投資の中長期債の12兆1,023億円です。
これはグローバル企業が海外子会社からの配当と、投資家による海外投資での利益が大きいと言えるでしょう。
この点において、一部のグローバル企業社員と投資家の所得増は期待できるでしょう。
一方で、貿易収支が赤字ということは、物の流れにおいては利益を得られていないので、国内企業向けや国内市場向けの企業社員の所得増は厳しいでしょう。
国内で所得の再配分が適正に行われないと、格差社会は拡大する可能性が高いのではないでしょうか。
貿易収支の赤字を改善するために、大きいのは、付加価値を高めた製品の海外輸出を増やすことと、国内市場向けの資源輸入額を減少させることが考えられます。
輸出額の大きなものは、鉄鋼等の素材と自動車などです。
残念ながら、最終日本製品の国際的なシェアは自動車や複合機などの一部商品を除いては低下しています。
しかし、国内市場の製品の長期使用や、資源循環率を向上させることにより、資源輸入額を減少させることが出来るかもしれません。
また、循環型社会に向けた製品・サービスを進め、それを海外に展開することにより、製品の海外輸出増にも繋げられれば、日本の競争力向上にも役立つでしょう。サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行と拡大は、日本にとって重要です。
輸入額で大きなものとして、原油や液化天然ガス(LNG)のエネルギー資源が含まれています。
これらのエネルギー資源輸入を減少させることも、貿易収支改善のためには重要です。
再生可能エネルギーの拡大が求められます。電力での再生可能エネルギーの比率を高めることと、再生可能エネルギーを優先して使うことも重要です。
カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの拡大やサーキュラーエコノミーの活動は、環境への活動として捉えられています。
しかし、これらの活動は、日本の経常収支改善のためにも重要な活動として、認識・加速されることが望まれます。