EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム41〉ISO、IEC、ENなど環境規制にも引用される規格


2024年7月11日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

ISO、IEC、ENなど環境規制にも引用される規格

ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)で国際規格の開発は加速しています。

EUでは環境規制に規格を引用すること多く、EUでビジネスを行う上で重要です。

 

 

背景

「規格」と「標準」は同義に扱われることが多いですが、「規格」は文書化されていることが前提となります。ISO9001「品質マネジメントシステム」やISO14001「環境マネジメントシステム」等の認証規格が日本でも取得企業が多く有名ですが、ISO規格数は2万5千を超えており、多くは認証を目的とするものではありません。さらに、国際規格としては、ISO規格、IEC規格等があり、環境関連でも様々な制度に引用されています。

日本では常識と思われていることがISO規格で定められたものと異なるものもあります。例えば、小数点は日本では「.(ピリオド)」を使用しますが、ISOでは小数点は「,(コンマ)」が推奨され、ISO規格文書内では「すべての言語の班において、小数点は境界線上にコンマを使って表さなければならない。[i]」とされています。

EUでは標準化が環境規制と共に企業の持続可能な開発を進めることに期待しています。国際規格の関係などに関して、少し示します。

 

 

国際規格の作成組織

主な国際規格について作成組織と関係については下記のとおりです。
 

①ISO規格

規格制定はISO(国際標準化機構)が行います。対象範囲は、下記の電気と通信を除く全分野です。規格作成には、いくつかの方法がありますが、最も一般的なのは専門委員会(Technical Committee:TC)が設置され、そこで作成されるものです。専門委員会の数は2023年12月時点で268にもなっています。設立はISAとして1926年に設立され、ISOに改組されたのは1947年です。

規格番号は、「ISO○○○○」で、規格文書の他に技術仕様書(TS)、技術報告書(TR)及び公開仕様書(PAS)があり、それぞれ番号は「ISO/TC○○○○」、「ISO/TR○○○○」及び「ISO/PAS○○○○」と記されます。
 

②IEC規格

規格制定はIEC(国際電気標準会議)が行います。対象範囲は、電気分野です。規格作成は、ISOと同様に一般的なのは専門委員会(Technical Committee:TC)が設置され、そこで作成されるものです。専門委員会の数は2023年12月時点で112です。歴史としてはISOよりも古く1906年に設立されています。

規格番号は、「IEC○○○○」で、規格文書の他に技術仕様書(TS)、技術報告書(TR)及び公開仕様書(PAS)があり、それぞれ番号は「IEC/TC○○○○」、「IEC/TR○○○○」及び「IEC/PAS○○○○」と記されます。

ISOとIECは共通のISO/IEC専門業務指針[ii]等により運用されています。

 

WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)により加盟国は、強制規格、任意規格、適合性評価手続を必要とする場合において、関連する国際規格をその基礎として用い なければならない (2.4条、5.4条等)となっており、ISOやIEC規格が定められていると、関連する規格を日本国内の運用するものであっても独自に制定することかできません。

国際規格には、他にもIEEE(電気・電子技術者学会)規格、ITU(国際電気通信連合)規格、ECMA(Ecma International)規格などの国際的な業界による規格もあります。

 

 

国・地域規格

日本にJIS(日本産業規格)があるように、多くの国に規格があり規制等で引用されています。中でもEU加盟国で使用されるEN規格は多くがEU内での規制であるEC指令やEC規則に引用されています。
 

①EN規格

規格制定はCEN(欧州標準化委員会)及びCENELEC(欧州電気標準化委員会)が行います。CENはISOと、CENELECはIECと連携しています。

規格番号は、CENとCENELEC共に「EN○○○○」と記されます。

 

②ISOとCENとの関係

ISOとCENはウィーン協定(正式名称: ISOとCENの技術協力に関する協定)により、この協定は規格制定に関して作業の重複を防止し、基準を準備する時間を短縮する目的で結ばれています。この協定によりCENがその他の非欧州諸国(米国、日本、中国など)の関与なく作成した規格原案を。そのままDIS(国際規格原案)としてISOに提出できます。
 

③EUマンデート

EUではEU委員会の管理により実施されるEU加盟国と欧州標準化団体(CEN及びCENELEC)との合意に基づいて、EU委員会から出されるマンデートに基づいて、規格を開発することになっています。このマンデートは、規制に引用するための規格開発を目的とすることが多く、注意することが必要です。

例えば、CENとCENELECのWork Programme 2023[iii]を見ると、マンデートM/584について次のように記載されています。

2022年8月、欧州委員会は、プラスチックリサイクルとリサイクルプラスチックに関する新たな標準化要請をCENとCENELECに通知し、循環型経済におけるプラスチックに関する欧州戦略(M/584)

標準化要請ではCENとCENELECに11の欧州規格を改訂し約45の新しい成果物を開発するよう義務付けています。要請で取り上げられているトピックには分別されたプラスチック廃棄物の品質等級、リサイクル品の特性、包装、建設、電子•電気機器、道路車両、農業など、さまざまな用途で使用される幅広い製品のリサイクル設計ガイドラインなどがあります。

この標準化要請に関する作業には、7つのCEN技術委員会と2つのCENELEC技術委員会が関与します。

CEN/TC 249「プラスチック」は選別されたプラスチック廃棄物(HDPE、DPE、PP、PET、PVC、PS、EPS)の品質等級に関する標準および製品に使用するためのプラスチックリサイクル材(rHDPE、rLDPE、rPP、rPET、rPVC、rPS、rEPS、rABS)の品質評価に関する標準を含むほとんどの成果物を改訂および開発します。

標準化要請とは独立してCEN/TC249はさまざまなテスト⽅法についてISOと緊密に協力し続けます。
 

ISOではTC61「プラスチック」がありますが、ISOで上記に関しての規格開発が進められなければ、CENが独自に開発し、開発完了後にISOに対してDIS投票を要求することができます。同様にCENやCENELECの様々なTCにマンデートによる標準化要請が行われています。

 


[i] ISO/IEC専門業務指針第2部 ISO及びIEC文書の構成及び作成に関する原則と規則(2018年版)英和対訳版 (jsa.or.jp)

[ii] ISO/IEC専門業務用指針第1部及び統合版ISO補足指針(2024年版)(jsa.or.jp)

[iii] WORK PROGRAMME2023 (cencenelec.eu)

 

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