北極海氷について以前もコラムに書いた通り、2012年以降減少の傾向は
見られない。南極海氷は安定していたものが、昨年減少が見られた。
その後どうなっているだろうか。
背景
気候変動によると考えられる台風10号の迷走(停滞)による被害が社会活動にも影響を与えています。温室効果ガスの排出削減は早期に進めて気候変動による影響拡大を抑えるべきだと思います。しかし、事実は客観的に捉え、原因解析により将来の影響評価と、必要なものには対策を考える必要があります。
2022年12月のコラムでは、北極海氷面積の減少が2012年以降は進んでいないことを示しました。一方ずっと安定していた南極の海氷面積が、昨年突然減少し。今後が危惧される報告が出ました。それから約1年、南極海氷の減少は続いているのでしょうか。北極と異なり南極には陸地があり氷床が存在します。その関係はどうでしょうか。
北極海氷面積の減少傾向は見られない
極域環境監視モニター[i]のデータでは、北極海氷の面積は2012年9月16日に最小となりました。それ以降、それを下回っていないのは、2022年のコラムに記載してから変わっていません。ただし、図1に示すように2023年と2024年は減少傾向にあります。これが続けば2012年の記録を更新することも数年先にはあるかもしれません。
図1. 北極海氷面積の変化(2024年8月29日)
(出典:Arctic Data archive SystemのVISHOPを基に作成)
南極海氷面積の減少も進んでいない
南極海氷については、図2に示すように、これまでは減少傾向が見られなかったものが2023年に最小値も最大値も過去最少を示しました。特に問題視されていたのは、2013年は4月~6月がこれまでの年より大きく乖離していたことでした。しかし、図3に示しますように2024年には、その時期の乖離は見られず過去に戻っているようです。ただし、8月29日のデータは、2013年レベルになっていることは今後注視した方が良いでしょう。
図2. 南極域の海氷域面積の経年変化(1979年~2023年)
(出典:気象庁webサイトより)
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/shindan/a_1/series_global/series_global.html
図3. 南極海氷面積の変化(2024年8月29日)
(出典:Arctic Data archive SystemのVISHOPを基に作成)
最後に
南極は北極と異なり陸地が存在し、その陸地には大量の氷床が存在しています。その変化については十分なデータが得られていません。もしかすると、氷床が融解により移動し、南極海氷が減少しない要因になっているかもしれません。北極海氷もグリーンランドの氷河の崩壊により同様のことが起きているのかもしれません。または極圏の海流の変化が起きており、海氷の減少を抑えているのかもしれません。
陸表の融解は海水面を上昇させますので、地球のすべての海岸線に深刻な影響を与えます。それに対して海氷の減少は直接的には海水面の上昇には影響を与えませんが、海流の変化など気候変動にどのような影響が出てくるかは判りませんので、今後も注視していく必要があると思います。
北極海氷の減少により、北極海航路が利用できることを考える方がいますが、今の状況では近い将来に考えられることではないですし、万が一、そのような事態になれば気候変動による被害は計り知れないものになるのではないかと思います。