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EHS総合研究所

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〈EHS研究所 コラム48〉サーキュラー・エコノミーの企業の目標は?


2025年3月10日

EHS 総合研究所
所長 則武祐二

サーキュラー・エコノミーの企業の目標は?

企業は活動の目標をどう決めれば良いのでしょうか?
資源は枯渇するのか、企業は資源を利用できなくなるのか、
循環利用で解決するのか?

 

背景

サーキュラーエコノミーに関しての企業の取り組みも増加しています。しかし、企業の目標は明確でしょうか。気候変動に関してはカーボンニュートラルを目標とすることが政府・企業共に当たり前のようになりつつあります。しかしサーキュラーエコノミーは何を目指せば良いのか、どこまで行えばよいのか判らない方も多いと思います。

筆者が前職の時に、資源に関する長期目標として、新規投入資源量を2007年度比で 2050年までに1/8とするとしました[i]。これは2007年7月に(独)物質・材料研究機構が、「持続可能な資源利用を実現するためには2050年までに天然から採掘する一人当たりの物質総量を現在レベルから、8分の1にする必要がある[ii]」とのレポートを根拠に設定しました。資源量の算出は関与物質総量(TMR)[iii]と認識していました。

資源消費の持続可能性に関して考察します。

 

資源枯渇

平成23年版環境白書・循環型社会白書・生 物多様性白書(以下、平成23年版環境白書とする)では、「枯渇性資源について確認埋蔵量から年間生産量を割った可採掘年数は、鉄鉱石が70年、鉛が20年、銅が35年、金が20年、クロムが15年等、その多くが100年 を下回っており、現在の生産ペースが続くと、現在の世代に対して地下資源の安定供給が困難となる可能性に加え、将来の世代に資源を残せない事態が生じる可能性も否定できない」ことが記されています。

しかし、埋蔵量は「現在の技術とコストで採算性のある可採量で未可採のもの」ですので金属価格が上昇すれば品位の低い鉱山でも採算性は向上し埋蔵量は増加します。現在は多くの資源において、埋蔵量がゼロになることは想定できないとする考えの方が優勢だと思います。

 

資源制約・経済的リスク

①品位低下によるコストと環境影響の増加

銅は地表部の高品位鉱石を掘りつくし、鉱床深部の低品位鉱石を採掘する場合が増えており、日本に輸入される銅鉱石の品位は、2001年から2008年までに約32%から約29%まで低下していました。銅鉱石の品位の低下は、銅の単位あたりの生産に伴う廃棄物や銅の精製に必要なエネルギーが増加します。

 

鉱物資源の採掘に伴う環境負荷を評価するものとして、隠れたフローを含めた関与物質総量(TMR:Total Material Requirement)があります。平成23年版環境白書に図のように、2001年以降、世界の銅鉱石の生産量に大きな変化はないもののTMRの値は増加しており、銅鉱石の品位の低下に伴う環境負荷の影響増加が示されています。

図. 世界の銅鉱石の生産量と関与物質総量(TMR)の推移
(出典: 平成23年版環境白書・循環型社会白書・生 物多様性白書)

 

②採掘による汚染

鉱山では化学物質による汚染が頻繁に起き、鉱山近辺だけでなく河川を通して広範囲に影響を与えることがあります。芦尾銅山鉱毒事件は、1878年に起きた渡良瀬川の鮎の大量死から、1973年の閉山後も続き、2011年の渡良瀬川下流の農業用水路での鉛の基準値越えの要因となったともいわれています。渡良瀬川の80km下流の沼地での汚染も報告されています[iv]。汚染物質も銅だけでなく不純物であるカドミウムや鉛の汚染や亜硫酸ガスによる汚染も起こしています。死者数は1000人以上で、様々な健康被害も起こしました。

 

採掘による汚染は様々な国で起きており、鉱物資源の産出量の多いペルーでは、様々な汚染が起きており、休廃止鉱山に関する対策費用が2億ドルと見積られる[v]など、大きな費用を要し、十分に対策が実施されたかも定かではありません。

採掘に関して十分な基準のない国において採掘されているので、汚染対策費や人件費が廉価であるため採算が取れているものが、今後大幅にコストが上昇することは十分に予想ができます。

 

③資源利用量増加による温室効果ガス排出量の増加

資源利用が温室効果ガス排出につながることは明らかです。「世界資源アウトルック2024」のキーメッセージのひとつに下記が記されています。

資源利用量が予測通り2060年までに60%増加するならば、気候、生物多様性、汚染に関するグローバル目標達成に向けた取り組みが頓挫するだけでなく、経済的繁栄や人間の福利の実現も妨げられる
 

また、「物質資源(化石燃料、鉱物、非金属鉱物、バイオマス)の採取・加工は、温室効果ガス(GHG)排出量の55%以上の原因となっている。」とも記されています。カーボンニュートラルや温室効果ガス排出削減が重要になっており、資源利用による温室効果ガスの排出は最小限にすることが求められます。

 

④資源国の偏在

資源供給が特定の国・地域に偏在していることは、国際情勢によって供給がとだえる可能性があります。特定国への依存度が高いと調達リスクが増大します。

 

⑤人権と環境デューデリエンスの情報開示

前述の汚染に関連して、鉱山は近隣住民の健康被害と、そのことによる近隣住民との紛争が起きることがあります。一方でEUでは企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令案や電池規則による製品のサプライチェーンでの環境デューデリジェンス情報の伝達が求められようとしています。人権問題や近隣住民との紛争が起きている資源の利用は問題視されることが予想されます。

 

まとめ

資源が枯渇することはほとんどないとしても、ここまで示しましたように、様々な資源利用の制約は進むことが予想されます。ビジネスを継続するためにも、持続可能な資源利用のために、資源利用量または上流側の循環利用率に関して目標を定めて取り組むことが望まれます。

 


[i] リコーグループ環境経営報告書2009.pdf

[ii] 持続可能な金属資源利用には使用総量を1/8に減ずることが必要:物質・材料研究機構 | (旧)ウィークリー:つくばサイエンスニュース

[iii] TMR – H-9_4.doc

[iv] 「渡良瀬遊水地に隣接する沼で採取した底泥コア試料の重金属濃度の鉛直分布と足尾銅山による銅生産履歴の関係」2015年環境科学会誌

[v] 「ペルー政府による鉱害対策の現状と課題」2008年 金属資源レポート

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